安倍川源流の河畔にある梅ヶ島温泉は、武田信玄の隠し湯や徳川家康の秘湯として使われ、昭和の文人たちにも愛されてきました。長い歴史に彩られたこの温泉郷には“梅ヶ島七滝”と呼ばれる名所があり、鯉ヶ滝はその一つです。
上段までの落差50m、小さな滝が連続し巨岩の間を荒々しく縫って落ちる鯉ヶ滝には、梅ヶ島の農民三郎左衛門と、彼の許婚およねの悲恋物語が伝わっています。美しい幽谷の情景は、滝に落ち緋鯉と真鯉に化身して結ばれたという二人を今も静かに見守っています。